好きな作品のことを書く : 第一回 Demon‘s Souls Remake

誰にでも好きな作品はある。ゲームも本も漫画もアニメも映画も舞台でもジャンルを問わず好きな作品があるという事はそれだけでいい事だし、何より生活を楽しくしてくれたり明日も頑張ろうとかそういう気持ちにさせてくれる。

だが自分の場合、好きな作品の話をする時に少し恥ずかしいなと思うことがあったり、SNS等で好きな作品の話をする時はネタバレに触れる事をしゃべる訳にもいかないので、好きな作品の話をする機会を作る事、意外と難しいなと思うようになってきた。

今プレイしているゲームや読んだ本の感想もきちんと残しておきたいなと思うが、かつて触れて好きになったコンテンツの話をする機会というのもなかなか無いので、こういったコーナーを作ってみて好きな作品を好きなように語り散らしてみようと思い至った。


今回はPS5向けに発売されたDemon‘s Soulsの話をします。
話の本題を始める前に、お話やゲーム部分の革新に迫る部分のネタバレはなるべくしないように心掛けますが、どういう所が好きだったとかそういう所で所々ネタバレをしてしまうかもしれないので、その点のみお気をつけください。


PS5が発表されてその当時のゲームグラフィックスの進化が凄まじくて衝撃だった

話が少し逸れてしまうのだが、PS5が発表されてからおよそ半年後、Epic GamesからUnreal Engine 5のPS5でのリアルタイムデモ映像が発表されてその内容にめちゃくちゃに驚いた。何に驚いたかを説明するのが難しいので、時間がある方は発表時の映像を見て欲しい。

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精密に造形された岩肌や建造物、石像のディティールや太陽光の美しさ、そして何よりLOD※が不要という文言に驚いた。(※Level of Detail - プレイヤーの遠くにある物体は簡略化されたデータを使用し、近付けば近づくほど高精細なモデルに変更する事で描画負荷を軽減する技術 )
UE4のデモ映像の時もめちゃくちゃに驚いたのだが、UE5が発表された時は確実に何かが変わっていくような予感と、そして何よりこの品質でゲームがプレイできるんですか!?という期待感に一気に胸が躍った事は記憶に新しい。

そして、この品質のデモを動かしているPS5はとんでもないものだという予感が存在していた。


PS5のローンチタイトルとしてDemon's Soulsのリメイクが発表されたのでこれを機に触れてみたいと思った

そんなとんでもなくヤバい予感を感じさせるPS5の抽選販売に運よく当たってしまったので、ローンチタイトルとして出ていた Demon's Soulsをせっかくだしプレイしてみようと思い立った。

Demon's Soulsはゲームに触れた事がある人なら聞いたことがあるであろうソウルライクのジャンルの先駆けとなったタイトル (正確にはそのジャンルの名前が付いたのはDARK SOULSから)で、2009年にFROM SOFTWAREからPS3向けに発表されたものをbluepoint gamesがPS5向けにリメイクを行ったというもの。

高難易度な死にゲーと良く言われているシリーズで、攻略中は数え切れないほど死ぬことがあるのだが、その死の原因の多くは罠に引っかかる・敵からの不意打ちに引っかかる・敵の攻撃への対処が出来ていない。
などなどちゃんと覚えておけば正しく対処出来るような事が主なので、死ぬことがストレスを感じるというより、次こそは上手くやりたいからまた挑戦したいと思えるような作りになっている。

そうやってどこでどんな立ち回りをするのが適切なのか、少しずつ覚えていって長いステージを攻略していってある程度の所まで進めることが出来たら相応のご褒美がほぼ必ず用意されている。
序盤のステージであるボーレタリア王城城門は、それらのプロセスを繰り返し何度も経験できる作りになっているのでとても秀逸なステージだと思った。
もちろんそう思えるまで100回は死んだが、ボス部屋を開通させた時の喜びとステージ全体の構成が理解出来た時の感動と達成感に比べれば100回死んだ事など微々たるものだと思えた。


はっきりと語られないお話を想像しながら読み解いていく

ソウルシリーズやSEKIRO、Bloodborneに共通して言える話だが、明確なお話の概要こそあれど、そのお話の細部が言葉によってはっきりと語られる事は非常に少ない。
一番語られるのは要所要所のキーパーソンとの会話やあらすじとなっているが、公式サイトで公開されているあらすじがゲームの世界の概要を一番理解しやすいので、抜粋させて頂く。


北の国、ボーレタリアの王、オーラントは
人跡地の限界、氷山脈の奥地で、巨大な楔の神殿を見出し、ソウルの業を手にした。
ソウルとは、人に隠された、新たな力であるようだった。

だが、ボーレタリアの繁栄は長くは続かなかった。
老境に至ったオーラントは、更なる力を求め楔の深奥に入り込み
そこに眠る古い獣を目覚めさせ、色の無い濃霧と、デーモンたちが生じた。

色の無い濃霧はボーレタリアを覆い、デーモンたちは人々からソウルを奪い、喰らった。
ボーレタリアは、瞬く間に、ソウルに飢えた亡者だけが彷徨う亡国と成り果て
霧の裂け目から、多くの英雄たちを飲み込み、そして、誰も戻らなかった。

濃霧は、静かにボーレタリアから滲み出しつつあり、
既に北の地の大半が、濃霧の中に消失していた。
人々は、緩やかな滅びの予感に絶望していた。
やがて濃霧が、世界の全てを覆うだろう。

そんな中、最後の希望が
霧の裂け目からボーレタリアに入り込む……

 





こうしたすごくしっかりとした世界観が語られているが、このあらすじから先を更に詳細に知りたいと思った場合、誰かの口から明確な答えが返ってくることはとても少ない。
その代わり、ステージ上に落ちているアイテムや、攻略ステージの背景のの状況描写によって語られるストーリーテリングが非常に秀逸な作りになっている。

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Gameplay trailerで紹介されるチュートリアルステージである楔の神殿までの旅は物語の舞台となる北の国、ボーレタリアへと向かう道筋となるステージだが、かつては栄えたであろう石造りの城や通路は無惨にも壊れ、所々が木材で補修されていたりと人の意思が残っているかのような印象があるかと思えば、それらはすっかり植物に侵食されて荒れ果てているし、北国特有の冷えた空気が寒々しい雰囲気を作り上げている。

このマップで何が起きたんだろうとか、想像をしながら情報を得ていくことがひとつと、もう一つ手段があるのは、道中に落ちているアイテムや敵を倒したら出てくるドロップアイテムのフレーバーテキストを読むことでこの場所で何が起きたか、彼らは何者なのかを知る手助けになる。
とはいえ得られる情報は断片的なので、それらを集めてひとつひとつアイテムのテキストを確認して、このアイテムとこのアイテムのテキストは繋がってるかも。という仮説を立てながらプレイするというのもかなり面白い。

ヒントを揃えても明確な答えに辿りつかない事もあるが、そこは自分で想像して埋めてみてもいい。
分からないからこそ集会プレイもしてみて改めて観察してみてもいいし、ゲームを起動していなくてもボーレタリアで何があったのかをぼんやりと考えるだけで楽しいのだ。

勿論ある程度の答えは用意されているのだが、そこに行き着くまでに敵を掻き分けて、たまに休憩して、そんな事を繰り返して自らの中の仮説をどんどん組み立てていくような面白さもある。
自分の場合は何よりプレイヤーの想像力を信じてくれている気がしてとても好きである。


自分が一番好きなステージ

腐れ谷2は最高、本当に最高。Demon‘s Soulsといえば腐れ谷!!!!
腐れ谷は谷間にある全ての不浄が流れ着くマップで毒や疫病が蔓延する中、病による苦痛を少しでも和らげようとする村人たちは、来訪者のソウルを求めて襲いかかってくるというマップ。

ネタバレになってしまうのだが、この腐れ谷はエリア全体を通してとても好きなマップだ。
暗いし足場は狭いしどんな方向から敵が襲ってくるのかすら分からないし、中には回避手段のローリングを封じられる大沼のエリアなんてものもある。そしておまけに至る所に毒や疫病といった状態異常のリスクが存在するという最悪に最悪をかけ合わせたようなマップだが、このマップが本当に大好きだ。

解毒用のアイテムの残数に気を配りながら常に不意打ちを警戒して少しずつ前に進まなければならない緊張感と、腐れ谷2の大沼地帯後半の巨大腐敗人2体と、毒霧を出す腐敗人が居るエリアでどんな手段で敵を一体ずつ釣り出して狭い陸地で戦うかを考えている時は本当に苦しかったし、その後に集落地帯を超えないといけない事が分かった時は一度絶望したが、それを超えてボスまでのショートカットルートを開通させる事が出来た時はこの長く苦しい旅をもう繰り返さなくてもいいんだという安堵と、達成感に打ちひしがれた事は記憶に新しい。

そして、具体的な内容に触れることは出来ないのだが、その更に奥にあるエリアの攻略をしながら本当のデーモンとは一体誰なのかという事を実感したのも腐れ谷というマップが好きな所だ。


圧倒的なディティールで描かれるグラフィック


最初にゲームを起動してプレイをしいた時は、これは本当にゲームグラフィックなのか?と錯覚するほどとにかく目に映るものの造形が美しい。
一個一個が崩れていたり傾いてたりする石造りのタイルの上に土が盛られて枯れ草が生えていたり、乾燥して繊維が裂けた木材だったり、石積みの壁の端が欠けて崩れ落ちていたり…あらゆる所にその場所がかつてはどんな所だったかを語ってくれる。

とても荒涼とした世界観で出会う人々は来訪者のソウルを求める亡者が大半だが、そこにはかつての人間の暮らしの跡が確かにある。
攻略していくダンジョンの種類や階層毎にかつて人間が居てそこで何かをしていた跡というものが確実にあって、攻略を開始した時点からボスが待ち構えているエリアに至るまでの道筋でフレーバーテキストを全く読んでいなかったとしても、この場所でどんな事が起きたのかを想像できるようなマップになっている。

これはプレイしたことがある全てのソウルシリーズに共通して言えることだが、マップから得られるストーリーがすごく重厚なことが自分をソウルシリーズに夢中にさせた大きな点だ。



多くを語られない事柄に身を置きながら緊張感を持って世界を歩くことがたまらなく楽しい

背景の情報が非常に多くてもそれがストーリーの全容を表しているという訳ではなく、誰がどこでどのような事をして現在に至ったのかが語られる機会は非常に少なくNPCとの会話で得られる情報も非常に断片的なので、一周でストーリーの全容を理解するのはかなり難しい。
実際自分も一周目をクリアした時はおおよその全体の流れはなんとなく理解したが、細部に至る部分は何も分からない状態でエンディングを迎えてしまった。

どこのダンジョンのどれが分からなかったので理解するためにまた周回を始めようとしてみるが、2周目はクリア時のステータスは持ち越せるが、その分敵も強くなっている。

オーラントの目的は何だったのか、ソウルの秘密は結局何なのか、尽きない疑問を動機に今度はダンジョンを丁寧に歩いてみようという思いながら一周目と少し違う形の緊張感を持ったダンジョンにまた身を投じていくのだ。

この世界を理解したいという衝動から拾ったアイテムのフレーバーテキストをつぶさに読んだり、NPCとの会話にちゃんと耳を傾けようと意識したり、それでも分からない時は考察をしてくださっている方の力を借りさせてもらったりしてDemon‘s Soulsの世界を少しずつ理解していく工程は、ゲームを起動していない時もあれって結局なんだったんだろう。と思いを馳せる事になるし、情報が整理しきれずに右往左往してしまう時間も含めてとても楽しい。

知りたいという欲求に駆られながらも、知るためにはまた危険に身を投じなければならず、常に皮膚がヒリつくような緊張を感じながらドロップアイテムを求めてひたすら敵を倒し続けたり、出てきたアイテムに一喜一憂したり、ダンジョン攻略の全容は理解している筈なのにダンジョンを歩く工程は果てしなく長く、ゴールへの道筋が見えてきた時にはこれまでしてきた旅がとてつもなく長いものであったと感じさせる。

このゲームのお陰でコロナ禍が始まったばかりの2020年の夜を楽しい思い出にする事が出来たし、ソウルシリーズというジャンルを好きになったきっかけを与えてくれたタイトルでもあるので、今でも変わらず大好きなタイトルだし、いずれPS3版の原作もプレイしてみたいと思っている。

その為にまずはまだクリアしてないDARK SOULS 2と3をクリアしなければ…。